知って 考えて 声をあげる
教育環境は変えられる

 公立小中学校の設置主体は市町村です。よって公立小中学校の教育環境への要望は市町教育委員会および首長や議会に対して郡市P連が声を出すことによって働きかけることができます。また県P連は各郡市の取組事例や各郡市の環境格差を知る場として有益な場であり、さらには県立高校入試の在り方など県教委に働きかけるに適した団体でもあります。
 教育がどんどん様変わりしていく今、子どもたちが健やかに育つための公教育環境に対して、会合や研修で現状をまず知り、そして各会合で議論して、それぞれのPTA団体を通して保護者地域の声を上げることで地域の公教育環境をより良く変えていける力をPTAは有しています。

 公立小中学校のエアコン整備についてです。いまやほとんどの学校で整備されていますが、かつてはA市の小中学校ではほとんど整備されていて、隣のB市ではほとんど整備されていないといったことがありました。酷暑の学習環境として大きな差が生じているわけです。そしてA市の児童生徒もB市の児童生徒も、県立高校入試においては同じ学校区のため同じ高校を受験していくことになります。エアコンの有無をことさら受験に結び付ける必要はないのかもしれませんが、ここで問題があるとするならばB市の保護者や児童生徒は隣のA市はほぼエアコンが整備されていて、自分の市ではほぼ未整備だという実状を知らないことだと思います。「知って問題とせず」なのか「知らずにただお任せなのか」ではその姿勢には大きな違いがあります。
 地域の教育行政は地域の声と共に作っていく姿勢が大切です。行政都合で決めたことをただ受けとるばかりではありません。行政の予算も限られています。子どもたちの教育環境のことでましてや予算措置が必要な案件ともなれば、声を上げる民間機関がどれほどあるかと言えば実はそうは多くありません。ただただ受け身でいるのではなく、知って考えて声を上げることの大切さはこういうところにもあるわけです。
 GIGAスクール構想、一人一台端末も話題に新しいところです。本施策の大切にしている目的として、児童生徒の「思考力」や「表現力」を養ったり、また「個別最適化」つまりは個々の理解力に応じた学習の実現があります。実際、昨今の大学入試や高校入試なども思考力や表現力を求める出題や入試スタイルが増えています。
 さて、この端末利用も自治体間格差、学校間格差を叫ぶ声はとても大きいものがあります。まずいち早く配布をした自治体、なかなか配布をしなかった自治体があります。わが子が通う学校のある自治体の配布は隣の自治体と比べてどうなのかご存じでしょうか?また「紙と鉛筆こそが勉強である」といったスタンスで授業スタイルを一切変えないという先生もいれば、授業研究を繰り返し端末を有効活用している先生もおられます。問題は、どちらの先生が良いか悪いかの前に、公教育義務教育課程においてそのような差異があっていいのかどうかということです。端末も税金で賄われています。そして国費で支給されています。しかしその恩恵にあずかれる児童生徒は地域ごと学校ごとでも大きな差があるということです。
 結びに、このような事例をまず知り、議論して、声をあげるときには声をあげる力を有していること自体を知っていただき、より良い地域の教育環境作りに繋げていただければと思います。

安藤 大作(三重県PTA連合会 元会長)

[執筆者・安藤大作氏プロフィール]
平成23・24・25年度三重県PTA連合会 会長
平成25年度 (公社)日本PTA全国協議会 副会長
平成25年度 日本PTA全国研究大会 実行委員長
(公社)全国学習塾協会 会長
日本民間教育協議会 会長
(公財)日本数学検定協会 評議員
経済産業省 未来の教室とEdTech研究会 元委員
文部科学省 不登校に関する調査協力者委員会 元委員
総務省 令和4年度「学外教育データ連携に係る実証事業」有識者検討会 有識者
三重県学力向上推進委員
株式会社安藤塾 代表取締役
社会福祉法人むげんのかのうせい 理事長
FM三重にて「安藤大作エデュケーションラジオ」毎週放送中

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